特別座談会
三島健一朗(以下、三島):
今日はわざわざ本社工場までお越しいただきありがとうございます。ブルーシュを作る側の我々と使う側のお二人が、こうして改めて向き合うことができたので、ブルーシュについての思い入れや感想など、それぞれの立場から感じることを語り合いましょう。よろしくお願いします。
重見行幸江氏(以下、重見):
私は、もともと筆フェチなんですよ。タイプの違う筆を使い分けて、ほとんど筆だけでメイクアップを仕上げます。だから「この子がいないと仕事にならない」っていうほど、ツールでありながら、私にとって手の代わりになってくれる、大切な相棒ですね。
森川丈二氏(以下、森川):
僕も筆1本1本へのこだわりがすごくあります。もともと絵の勉強をした時期があって、画筆をたくさん使ってきました。だからこういう仕事を選んだみたいなところもあるほどです。
箕浦透(以下、箕浦):
そうなんですか?! 実はお二人に初めてお会いして、まず驚いたのが、筆のことを「この子」とか「この人」とかって呼んでいらっしゃることなんです。それぐらい愛情があるということが伝わってきました。大切にしていただいているというのは、作り手にとって嬉しいことです。
森川:
一度気に入ると、なかなか手放せなくて…。ボロボロの状態なんですが、壊れたら自分で修理して、20年使い続けているものも中にはありますね。
重見:
そうなると、もうその筆は森川の手になっているんです。たまにどちらかの道具で一緒に仕事をすることがあるんですが、森川の筆を手にとると違和感を覚えます。
三島:
同じ筆でも違いますか?
重見:
そう、同じ筆なんですけど、何かが違うんです。
箕浦:
それはクセがついちゃっているということなんですかね。
重見:
きっと、そうですね。
森川:
クセがつくほど、愛着がわき、1本1本を消耗品として考えられなくなっていくんです。いろんなものを試した中で、その1本に出会って、それを大事にする。それの繰り返しで、どんどん増えていき、いつも持ち歩いてる仕事用の道具ケースの中には、現在50本ほどの筆が入っています。でもこの中で1本たりとも欠けてはいけないんです。
重見:
そう。ブラシケースを広げて、1本でも筆がなくなるとすぐに分かるし、「何の筆がない!」とアシスタントに注意し、探させます! これだけ持ってるんだから、いいじゃない、って思われるでしょうけど(笑)。
森川:
この筆を使えば、このアイシャドウがこのくらいの発色で描ける、とかいうイメージがありますからね。
箕浦:
壊れたり、なくしたりすると、同じ商品を買われるんですか?
重見:
基本的にはそうですね。なので、仕様が変わってしまうと、とても残念です。以前、気に入って使っていた筆があったんですけど、毛の量が減ってしまったことがあったんです。売場で、すぐに気がつきました。
森川:
そうするともう、全然別物になってしまうんです。魅力がなくなってしまうというか…。
重見:
このように森川も私も筆に対しては特別な思いがあるので、ブルーシュのサンプルを試す際には、相当厳しい視点で吟味させていただきました。
森川:
常日頃から理想とする筆を手に入れたいという思いがありましたので、今回ブルーシュの開発に携わることができて、とても嬉しかったです。