時代的な背景もあり筆作りに着手した当初は、ヤギ毛、馬毛、豚毛など、安価で手に入るあまり質が良くない天然毛を使用することが多くありました。それでもそれぞれの毛の特性を生かし、油彩、水彩、アクリルなど、使用目的に応じた毛を選定することで道具としての筆の精度をあげていきました。

当時、ヨーロッパ市場で良い筆の代名詞であった、コリンスキーやイタチ、リスをはじめとした、その他の獣毛を使用した筆の生産を開始します。整毛の技術や毛の選別にこだわり生産したことで、国内だけでなく、海外でも評価されるようになります。以降、高品質な筆の数々は高級画筆として広く認知されています。

獣毛に変わる新しい素材としていち早く化繊の研究に乗り出します。最初に商品化した化繊の筆の毛先は白でした。その後、独自の染色方法を開発し、着色。さらに獣毛に近づけるための技術も開発。またお互いの特性を生かすため、天然毛と化繊毛をブレンドした筆もこの時期に初めて商品化されました。

画筆の品質を認められ、安定した商品を供給する中で、これまでなかった穂先の形状や用途に特化した筆の開発が進みました。まずは、トールペイント用の筆に着手し、自社ブランド「apple」を確立。さらに、車のストライプやヘルメットに絵付けする独特な形の筆など、6000種以上もの筆を開発し世に送り出してきました。

ネイルの筆は輸入品が多く、市場では使いにくい筆が高値で取引されていました。そこに目をつけ、高品質で適正な価格のネイル筆をラインナップする自社ブランド「b-r-s（ブルーシュ）」を立ち上げます。新たな溶剤を使った技法の研究を進め、2000年に製品化。現在では、国内、海外問わず支持されるトップブランドとなりました。

“筆を使うすべての人に質の良いものを知っていただきたい、使っていただいた方にはキレイになってもらいたい”そんな思いを胸に、メイクアップブラシという新たな分野への挑戦が始まりました。あらゆる筆を作り続けてきた当社の持ち味を生かし、1本1本手作業でていねいに仕上げた高品質の筆は、現在多くのプロアーティストにご愛顧いただいています。

2009年発売のプロ向けメイクアップブラシ「b-r-s（ブルーシュ）」に質感や使用感を可能な限り近づけ、高品質を保ちながら一般向けにリメイクした「usui（ウスイ）」を発表しました。ブランド名に初めて自社名を使用。ロゴの「i」の赤い点は、JAPANのイメージを強調し、日本の物作りの伝統継承に繋げていきたいという思いを込めています。これからも私たちは、変わらない使用感で長くお使いいただける筆を作り続けていきます。